「おはよー」
「おはよー、お姉ちゃん」
「おはよ、めーちゃん」
ふわぁ、と欠伸しつつダイニングキッチン<共有スペース>にMEIKOが入ると、珍しくKAITOとミクが朝から二人でキッチンに立っていた。―――『五兄妹』の中で料理が出来るのはこの二人(だけ)なのだが、KAITOは朝が苦手で、通常、朝食担当はミクが務めている。
こんな朝早くにKAITOが起きている、ということは――――。
「昨夜はよく『眠れた」ようね?」
「ええ、それは大変キモチよく。『お陰様で』、『お姉さま』。」
ミルクを温めながら、MEIKOを振り返って笑んだKAITOの目は心持ち赤い。
案の定眠れなかったらしい。
「ミクも?」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん!」
フルーツサラダをダイニングテーブルに並べながら笑うミクは全く屈託ない。
(よしよし、一応我慢はしてたようね、KAITO)
実際の処、もしも万が一、ミクの悲鳴でも聞こえてきたならば、急行して抹殺してやらねばと考えていたMEIKOである。
廊下を駆ける足音が響いて、KAITOの部屋の方からドアの開閉音がした。
あれー、カイ兄いないねぇーと、綺麗なユニゾンが聞こえてきた。
「もう起きてるよ、朝ごはんできてるからキッチンにおいでー」
KAITOが声を張り上げると、ええーっとこれまたユニゾンでの応えと共に、足音が再度響き、リンとレンがダイニングキッチンに駆け込んできた。
「おはよー! カイ兄、誕生日おめでとう!」
「おはよー! KAITOお兄ちゃん、誕生日とバレンタインおめでとう!」
双子が左右から飛びつくが、それを予期していたのか、KAITOはレンジの火を止め、ミルクパンからも体を離している。――――随分と『兄』らしくなったものだと、新聞を広げながら、MEIKOは笑った。そして今更ながらに、自分はいい忘れていたことに気付いた。
「誕生日、おめでとうKAITO」
リンとレン、それにミクを纏わりつかせたまま、KAITOは応えた。
「ありがとう、めーちゃん」
朝食中、お替りのカフェオレをMEIKOに差し出した向かいに座るKAITOが、低く呟いた。
「プレゼントは、もうちょっと考えて欲しいなぁ。……嬉しかったけど。」
「そう……?」
MEIKOは新聞から目を上げて、KAITOに視線を移す。
いつになく、カフェオレではなくホットショコラを飲んでいるKAITO。それを作ったのがミクであることは、昨日レシピ(リキュール抜きの)を教えたのが自分であるのだからMEIKOにはお見通しだ。
「贅沢いうんじゃないのよ、シアワセモノが」
終わり
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