布団に入ると、KAITOが背を向ける間もなく、ミクは当たり前のようにすりよってきた。そういえばミクがまだ幼体の頃にこうやって寝ていたか。
腕の中の温もりは変わりないが、大きさと重みは随分変わったな、と思っているとミクがふと呟いた。
「なんだかこうしてると安心する……」
「そうかい?」
「うん……。あ、そうだお兄ちゃん」
「うん?」
「お誕生日、おめでとう」
「え?」
時計を見ると、0時を回った所だった。
そういえば、今日は2月14日――――バレンタインで、Y社側での誕生日、だ。
「一番に云えて良かったぁ……」
ふにゃと微笑んだミクはぎゅっと更に抱きついて来た。
「……ありがとう、ミク」
(なるほど、これがめーちゃんからのバレンタインチョコ兼誕生日プレゼントってことか……)
かといってこのまま『戴いて』しまえば、明日の夜を迎えられないことは必至。プレゼントなんだか新手の嫌がらせなのかは微妙なラインだ。
ミクは半分眠っているようで次第に、言葉が不明瞭になっていく。
「……どして?」
「ん?」
「ど……して、おに……ちゃんて誕生日、2つ、あるの?」
「ギリギリまでY社にいたからね。14日はY社でカプセルを出て成人した日、17日はCFM社で最終調整してデビューした日だよ」
「そ……な、んだ」
「おやすみ、ミク。俺はどこにも行かないから」
額に口づけ、抱き締める腕にわずかに力を込めると、ミクは安心したように微笑んで、瞼を下ろした。
微かにまだ香るチョコレート。
腕の中の柔らかで温かな……成長したたとは云え、KAITOに比べれば小さな体。
(眠れる筈……、ないよ、なぁ……)
無邪気な寝顔を見つめながら、KAITOは深く息を吐いた。
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